浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

FOUJITA(PG12)

また…映画を観るためだけに広島へ行っちまった…。公開される前からずっと山陰で上映されないことを嘆いておりましたが、実際に広島はサロンシネマにエレベーターで上がって扉を開けたら内装のあまりのオシャンティーな様子に怯んでチケットを買ったらすぐに東急ハンズに逃亡。少し気をおちつけてから再び入場という狼狽ぶりでございました(;´Д`A なお山陰には東急ハンズも存在しません。逆に何があるんだろう我が地域…orz

いやあびっくりしたなあ映画館ってポップコーンの甘い香りに包まれてるものだと思い込んでたから。売ってる食べ物もサラダやらハムやら挟んだパンとかレモネードですよ!その上入ったら係員が映画の内容を説明してくれるし予告編は短い(洋画1本)し何と映画泥棒が出てこない!そんなことがあるのか⁉︎…うん、さっきから田舎もん丸出しだね?
まあ何というか…FOUJITAシネコンに来てはいけない映画だったんだ」と思い知りましたよ…_| ̄|○この映画はシネコンの新しい、明るい感じよりもこういうシックな感じの方が似合うのだ…。シネコンしかない地域ではどうにもならなかったんだ…(´;ω;`)ブワッ いいんですいいんです、ユイちゃん(@あまちゃん)だって「私に会いたかったら岩手に来ればいい!」と息巻いてたんだ。ジョー見たさに広島くんだりまで行こうと決めたのは自分なんだ。(でも相変わらずこのやり方を人に勧めるつもりはない)
Vie Et Oeuvre De Leonard-Tsuguharu Foujita

Vie Et Oeuvre De Leonard-Tsuguharu Foujita

 

この映画は3パートに別れているので別々に感想を書いていこうと思います。

 

フーフーかわいい(*´ω`*)

映像から読み取れることはフランスで活動している人気の日本人画家フジタは女好きで奇天烈な衣装を着たり自分のマネキンを作ったりパーティーを開いたりと変人な印象の人であり、しかし本人はフーフー(お調子者)と呼ばれるイメージを利用してるしたたかなところがあったり。前にEテレFOUJITA特集を観た時には藤田氏はこんな感じでフランスでは人気だった反面日本の画壇からは何だあいつはと批判されていたという話が出ていた。うん?あれ?

Q:今の話はオダギリジョーのことですか?

A:いいえ藤田嗣治氏のことです。

この時に自分の中でこの映画を観る時の心持ちが決まったというか、藤田氏のことをよく知らなくてもやっていけるかもしれないと思った。

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ちくしょうフーフーあざとかわいいっ…!(拳を握りしめながら)虚構の中に身を置きながら心は嘘に染まり切らずしなやかにしたたかに生きているその人はとても細いのになぜだか力強い。

Q:オダギリジョーの話ですか?

A:いいえ(この映画での)藤田嗣治の話をしています。

 

戦争画家フジタ

そんなこんなでかーわーいーいーと思いながら観ていたら突然の荒波とともに舞台がいきなり日本になってびっくり。さっきまでの色とりどりの鮮やかなパリから薄暗い戦時下の日本になってびっくり。戦況は日本にとって良くなさそうだけど、フジタ自身は時局をシニカルに見つめつつ適度に流れに合わせて生きているように思える。よくあるようなイクサハイヤデゴザイマスー的なことは誰も言わない。どうして戦争画を描いたのかというと、絵を描きたい、研鑽して得た新しい技法を表現したいという気持ちがあって、そこに時代が戦争画を求めていたとしたらまあ…戦争画でやるわなあという。どんな表現物にも必ずその時の時代の影響ってあるものだと思うので。

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振る舞いはまるで違うけど、日本でのフジタもフランス時代と同じように虚構の中で芯を持っていたのかなと思う。

 

物の怪じゃ!!!!!

などと観ているうちに再び海辺が映り、戦況がさらに厳しくなって疎開先のF村に。色合いはさらに暗くなっていく。どうもあの海辺のカットがパートが切り替わるサインのような気がする。というかここは事前にある程度聞いていた史実とはかなりかけ離れるのでこちらとしてはすごく戸惑った。え?き、狐???何か飛んだ???えっあのエンディング直前の爆撃?と川に浮かぶ絵はどういうことっていうか2人倒れてるように見えるけど誰??フジタではないよね???…遠征状態の映画鑑賞は何が困るってこういう「?」が浮かんだ時にもう1回観て確かめるのが不可能ってことよねー…orzパンフレットを読むとこの辺りは「狐に化かされる」としか書いていない。虚構を作り出して人を化かしてきたフジタが逆に化かされたってことなのかなー…(自信がない)

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ところで君代夫人もかなり狐っぽかったですね。良妻には見えないけど悪妻とも違う、でもこのめんどくさいフジタに最後まで寄り添えるのはこの人しかいないだろうなあっていう納得感。

 

映画というより動く絵画

わかりやすい映画ではないし(知ってた)むしろ観る側の理解を拒否してる気配すらある難儀な映画だったけど、わからないからつまらないのかというとそうでもなくて、カットの全てが美しくて、映画というよりも絵画がひとつらなりになって映像になっているような不思議な感覚でした。セリフも絵の専門的なことや高村光太郎の詩がわからなくても心地よいBGMのように聞くのもアリなのではないかと。ただ史実や絵画のことがわからない私から見た感想はこんな感じだけど、詳しい方から見たらたぶん全然違う印象なのではないか。それは知りたいような、知るのが怖いような。

3パートに分かれてるから3つの場面の絵をつけたけどそもそもポンチ絵しか描けないこの私が下手な絵をつけていいものなのだろうかという疑念はあるのだ…orz