浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

17才の帝国

日本の経済が没落した202X年、つまりいつか起こり得るそう遠くない未来。AIを使った政治を行う実験都市ウーアで総理大臣に選ばれたのは17才の少年真木亜蘭。就任後すぐに市議会を廃止し、その後も次々とこれまでの議会政治のやり方とはかけ離れた政策を提案する彼は市民の期待も不安も共に集めていくが、彼の願いはただまっすぐにウーアの市民と向き合い幸福を追求すること。その原動力は大人の政治に巻き込まれ命を落とした少女ユキへの想い。

真木総理の政策は正直かなり危うく見えていた。一応建前かもしれんが議会政治とは市民の代表としての議員の話し合いとなるわけで、そこを排除して自分たちで押し進めようとしたらそりゃあ反発も招くだろう。ただ「ユキは腐敗した議会政治によって殺された」という前提があると何も言えなくなってしまうところはある。物語としてはユキの死を引き起こした汚職事件が表沙汰になったことで一応のカタルシスはあったものの、結局真木総理のやり方は正しかったのかの結論がうやむやになっちゃったかなあという惜しさも残る。まあ視聴者の世代や立場によって真木総理の政策の見え方ってかなり違ってそうだな。

全5話という短さなので純粋な子供VS汚い大人の対立構造になっちゃってたかな、政府の悪口を言うなー!的思考の若者もこれまでの政治のあり方に疑問を持つ老人もいるよねえ、10話くらいだったらその辺の深みがあったかもしれない。なお1話の総理補佐サチのセリフ「大人が自分たちのことしか考えないからこんなことになってるんじゃない」は大人としてものっすごい突き刺された気分になったし本当に申し訳ない思い。

とは言うものの若者たちの無機質な危うさと美しさを併せ持つ画面はかなり惹かれるものがあり、面白かったです。みんな…選挙行こうな…ちゃんと選挙公報とか読んで候補者がどんな政策を立ててるか調べて悩んで悩んで少しでもマシだと思う方を選ぼうな…選挙とは人気投票でも当選者当てクイズでもない、あれは選ばれた議員を監視する権利を得るための行為だと思うんよ。選ぶことを放棄した者はダメ出しする権利もなくただ踏みつけられるだけよ。