開始15分で太平洋戦争が始まって終わるという超高速展開だけど、その中で描かれたのは戦争というよりは主上の人柄。闇から食材を取ってはならぬと配給のめざしだけを食し、一方軍部では豪華な食材が貯めこまれているという。もうこれだけで「このお方が裁かれるなんてあっちゃいけねえっ…!」と思わせるには十分でしたよ。
私自身は特に思想らしきものも持ってないし、普段の生活において天皇陛下とは、皇室とはみたいな大きなことはあまり意識していない庶民ですが(多くの視聴者もそういうところはあると思う)このドラマにおける落としどころはそんな視聴者にもわかりやすく納得できるものだったと思う。確かに味噌がなくなったら困る。あれは当たり前にあるものである日突然なくなってしまったら大変ですよ。味噌漬けのお肉美味しいよ。
一方で息子が戦死した黒川さんがどうしてもGHQをもてなすことに同意できなかったり、さんざんバカにしてくるアメリカ兵がPTSDに苦しんでいたりして決してこれがただの綺麗事だけで進んでいないことがわかるのも物語に厚みが出来てていいな。その上で篤蔵は自分がやりたいと思ったことを実行していく。「綺麗事だよ、だから本当にしたいじゃない。本当は綺麗事がいいんだもん」(by五代雄介@仮面ライダークウガ)ごめんなさい私電王は未視聴なんだ…。

冒頭で主上の料理にタコ糸が残ったままになっていたことで篤蔵に言った言葉は最後に明かされる。「入っていたのが朕の料理だけで良かった」そりゃこのお方のためなら励むわ…。退任の時には感謝され、ねぎらわれて。篤蔵の真心はちゃんと主上に届いていたけれど、それが彼一人の手柄ではなくて周りのみんなの助けでこうなったというのが心地よい。というか回想で登場する1話のアホの子がラストシーンのヒゲダンディと同一人物だなんて信じられない。月日の流れと成長恐ろしい。
12話という1クールドラマとしては長い方なのに「わー尺が足りない、ここもっと見たい」と思ってしまうのはそれだけこのドラマが真心をもって作られ、視聴者にもしっかり届いたことの証だと思う。いい民放の大河ドラマでした。真心をありがとうございました!