浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

第三番惑星の攻防(ウルトラマンZ二次創作小説)

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この案件を受けてpixivを退会しました。私はセクハラとかジェンダーとかそこまで詳しくわかっているわけでもありませんが、どういう意識があれば人様の隠部に顔を押し当てるという下劣な行動ができるのか?またそんな意識で運営されている企業がセンシティブな内容を多く含む投稿を扱うの怖すぎないか?と考えまして。

向こうに挙げていた絵は全部このブログにあるし、特に同人活動も絵の仕事もしてないから何か影響が出ることはないのですが、小説1本だけほんとどうしようと思った結果このブログに入れるしかないじゃないかという結論に至りました。小説というものを全く書いたことのない者が書いたためかなり拙いですがまあとにかく格納しておきます。突然地球にイフが現れ、たった一人そのヤバさを知っているヘビクラ隊長が悪戦苦闘する話です。本編でいうと13話付近。

Q:あってはならないことだけど今後はてなで同じようなことが起こったらどうするの?

A:どうしよう?

 

9時25分

対怪獣特殊空挺機甲隊、通称ストレイジ地球防衛軍日本支部が誇るロボット部隊である。といっても出動要請が掛からない間の作戦室は意外な程長閑な雰囲気に包まれている。パイロットのナツカワハルキとナカシマヨウコは今日も腕相撲で勝負をしているし、科学担当のオオタユカは怪獣の皮膚組織のサンプルを見つめて目をキラキラさせている。
 そして趣味の盆栽の手入れをしながら部下たちの様子を眺めているのが隊長のヘビクラショウタだ。───いやこの隊長、厳密にはヘビクラであってヘビクラではない。その精神はとある宇宙からこの地球に降り立ち、ストレイジに潜り込んだ無幻魔人ジャグラスジャグラーであることは皆様もご存知の通り。
 「全く呑気なヤツらだよな」ヘビクラは伸びすぎた葉にハサミを入れながら小声で呟いた。「まんまと宇宙人に侵入されてしかも隊長の椅子まで与えちまってる地球防衛軍なんてとんだ間抜け共だよ」そう言い終わるか否かのうちに怪獣出現を知らせるサイレンが鳴った。さっきまで和やかだった隊員たちの表情が真剣な目に切り替わった。「松川市の病院建設予定地に未確認物体出現!」ストレイジAIの報告にヘビクラは訝しんだ。そしてこの物体のせいで彼は今日一日振り回されることになるのである。
 モニターに映し出されたそれは確かに怪獣というよりは物体と呼ぶべきものだった。全長50メートル級の巨大な姿だが真っ白で何の飾りっけもなくただ丸い───
「何かまんじゅうみたいで美味そうっスねぇ〜」
「ハルキ、よだれを出さない」
「わあ〜あんなに大きいのに熱源反応なしなの〜!どんなエネルギーで維持してるんだろう〜調べてみたいなぁ〜❤︎」
 隊員たちがそれぞれ反応を示す中でザクッ!と大きめの音がした。
「隊長!その立派な枝切っちゃって良かったんですか?」
 ユカの声が全く耳に入ってない様子でヘビクラは愕然としていた。
「イフ………!」
 完全生命体イフ。まんじゅうのような珍妙な見た目だが、攻撃が全く効かない上にそれを同等の力で反射する恐ろしい能力を持つ。とある別次元の地球では何も知らない人類が焼き払おうとして滅亡寸前にまで追い込まれたという。そんな危険なヤツがなぜこの地球に?セレブロか?それともぺダン星のロボットキングジョーを鹵獲して地球防衛に使うことを危惧する宇宙の誰かの仕業か?いや今は原因を考えている暇はない。ストレイジの隊長としては直ちにこの事態に対処しなければならない。
「ハルキはウインダムで出撃。ヨウコはキングジョーに乗って命令があるまで待機。ユカはあの物体の分析にかかれ」
「押忍!」
「了解!」
「はい!」
「ハルキ押忍じゃなくて了解な」
「了解!押忍!」
「だから押忍じゃなくてだな」
 いつものやり取りを経て各自それぞれの持ち場へ急ぐ…が…
「隊長どこへ行くんですか?」
「ちょっとトイレ!」
 ユカの質問に慌てた声で答えるヘビクラだがもちろん行き先はトイレではない。
「隊長としての演技をしつつアイツに穏便にお帰り頂く。これが今日のミッションとはなかなか過酷なもんだな」
 一人呟きながらヘビクラはその身体をトゲトゲした魔人に変化させていた。
 

10時12分

松川市。山々に囲まれた荒野でその物体は動きを見せることもなくただポツンと佇んでいる。
「ウインダム現着!これより対処に取り掛かります!」
 ハルキ搭乗のウインダムが両手で物体を掴む。
 もちっ。
「わあっこいつすごく柔らかいっスよ。やっぱりまんじゅうみたいっス」
「ハルキ、掴みにくいってことはない?」
「それは大丈夫っス」
「弾力が強いんだねー。焼いて有毒ガスが出たりはしないのかな」
 ハルキの言葉からヨウコとユカがそれぞれの見解を出し合い対処法を探っていく。
「弾力じゃねえよ!イフは押した力と同じだけの力で押し返してるだけだ!」
 近くの大木から声がしたのでハルキがその方向を見るとそれは見覚えのある男だった。
「トゲトゲ星人!」
「だからそんな気の抜けた呼び方するんじゃねえよ!」
「えっ仮面の宇宙人様?ああーなぜ今私は基地にいるのぉぉー現場にいたら皮膚組織くらいは取れたというのにぃぃぃ!そしてあわよくば解剖したーい!」
 ハルキが付けた名前に調子を狂わされている間に通信でユカの嘆きを聞き、ジャグラーは内心怯んだが、気取られないように大声で叫ぶ。
「いいかお前、イフは何もしていない。誰も傷つけていない。ただそこにいるだけだ。それなのに殺してしまうつもりなのかー?」
「!!!」
 今度はハルキが動揺した。怪獣災害の中人命救助に向かい命を落とした父の背中を追うようにストレイジに入隊した彼だったが、卵を守っていただけのレッドキングを殺して以降、戦いとは、命を守るとは何なのか、心の中でグルグルと回る葛藤は未だその答えを見つけられずにいた。
「まーだ引きずってやがんなぁ」
 ウインダムの動きが止まったのを確認したジャグラーはニヤリと嗤い、木の影に隠れてヘビクラの姿に戻って懐からダークゼットライザーを取り出した。
ゼットンさん!」
パンドンさん!」
「マガオロチ」
 スリットに3枚の怪獣メダルを挿したヘビクラはダークゼットライザーをかざす。
「お待たせしました。闇の力、お借りします!」
 禍々しい光を放ち合体魔王獣ゼッパンドンが現れ、止まったままのウインダムに体当たりした。
「うわーっ!?」
 何が起こったのかハルキが理解した時には既にウインダムはゼッパンドンに組み伏せられていた。ゼッパンドンはウインダムを抑えつけたまま殴り続ける。
「ウインダム機体損傷率35%!…45、57、68…」
 AIのアナウンスが響く中ハルキは体勢を立て直すこともできずされるがままになっている。
「悪く思うなよ。戦場じゃ隙を見せる方が間抜けなんだよ」
 ヘビクラはゼッパンドンのインナースペースで呟いた。その表情は嗤いのようでも怒りのようでもあった。しかし腕から肩にかけて突然痛みを感じ、殴る手が止まる。顔を上げるとそこには見知った巨体。特空機3号キングジョーによる砲撃だった。
「さすがストレイジの誇るエースパイロット。状況を的確に判断して来たか」
 ゼッパンドンがウインダムから離れる。
「ハルキ大丈夫?動ける?」
 コックピットからヨウコが呼びかける。
「ありがとうヨウコ先輩!もう大丈夫っス……うわっ?」
 立ち上がろうとしたウインダムだったが受けたダメージが大きくふらついてしまう。
「ハルキあとは任せて!」
 キングジョーがゼッパンドンと後ろのイフにランチャーを向ける。するとゼッパンドンが前に出て砲撃を真正面から受けて大爆発を起こす。
「何なのあいつ!何で庇うの!?」
 ボロボロになって物陰に隠れたヘビクラはダークゼットライザーにゴルザ、メルバ、超コッヴのメダルを挿して合体怪獣トライキングに変身、両手を広げて再びイフの前に立ち、額から破壊光線を放った。
 ヨウコは怯むことなくキングジョーを4体のパーツに分離させて光線を躱す。そしてトライキングを捕らえてレッグキャリアーに乗せて高速移動し、余計な動きをさせないようにしながらブレストタンクで砲撃開始。
「全く敵には回したくない部下だよな!」
 ヘビクラはダークゼットライザーにさらにガンQとレイキュバスのメダルを挿して超合体怪獣ファイブキングに強化変身、左手から衝撃波動を繰り出した。
「うわあーっ!」
 さすがのヨウコもこれにはかなりのダメージを受けたがすぐにキングジョーをロボットモードに戻して次の攻撃に備える体勢を取る。一方ヘビクラは体中の痛みが激しくこれ以上の戦闘は無理だと感じていた。ボロボロの体を引きずりながらファイブキングは大木を4本引き抜きイフの周りに立て、さらに電線を引きちぎってグルグル巻きにした。プロレスのリングのような形の檻にイフを収めた状態になっている。
「いいか絶対これを破るんじゃねえぞ。破ったらまた俺は飛んでくるからな」
 そう言い残してファイブキングは消えていった。その遥か下の森の中でヘビクラが蹲っていた。
 

11時04分

「隊長どうしたんですかそのケガ!何かすごく長いトイレだったし!」
「あーちょっとトイレの中で転んじゃってな」
「どんな用の足し方したんですか!?」
 ユカの驚きに適当な返しをするヘビクラが作戦室に戻ってきた。ハルキとヨウコも一旦退却して集まっている。2人とも擦り傷程度で任務に支障はないがウインダムは損傷が激しくすぐの出撃は不可能とのことだった。
 仮面の宇宙人(ユカによる便宜上の呼称)の言動に沿う形でストレイジでもあの白い物体をイフと呼ぶことになった。
「あいつ何でイフをあんなに庇うのかな」
「前に縄張りに入ってくんじゃねーって怒ってたことあったし大切な子分か何かなのかもね」
 ヨウコとユカの話を聞きながらヘビクラは眉をピクピクと震わせていた。
 ——違うそうじゃねえ!アイツに攻撃したらそのまま跳ね返ってくるんだ!ヘタすりゃこの地球も滅亡になっちまうんだよ!でもそれを伝えたら「隊長何でデータにない怪獣のことを知ってるんですか?」「まさか宇宙人の知識だったりして」となりかねない!そして最悪解剖されてしまう!——
「隊長私の顔に何か付いてますか?」
「イイヤナンデモナイヨ」
 あまりに険しい表情で見たせいかユカに不思議がられたヘビクラは思わず裏声で返答した。
 ——何千年も悪事の限りを尽くしてきた俺だ、今更安らかな最期を迎えられるなんて思っちゃいねえ。でも研究材料にされるために殺されたいかっていうとそれは別の話だ——
「隊長……」
「ナンデモナイッテバ」
 再び裏声で答えたヘビクラがふとユカを見ると彼女は大きなコップに並々と入った玉虫色の液体を持っている。
「ナニカナ???」
「隊長いつもトイレ長いじゃないですか、やっぱり年齢的にそろそろアレなのかなーと思って体にいいジュースです。材料はバナナとセロリとghjk×●とレモンと◀︎□ksjmんsとそれから」
「待って早口で聞き取れなかったけど地球上にない物質の名前があった気がする」
「大丈夫ですって味は保証しますよ」
 ——どうする俺、そもそもいつもトイレが長い理由を言えるのか俺——
「いい部下を持ったな俺は。ユカありがとう(ゴクッ)」
 ——あれっ美味いな——
「俺……」
 ずっと俯いて黙っていたハルキがようやく口を開いた。
「俺、本当にイフを倒していいのかわからなくなって……トゲトゲ星人が言ってたっス。イフは何もしていないのに殺すのかって」
 いつもの明るいハルキからは考えられないような重い口ぶりに一同の表情も固くなる。
「でもねハルキ、今イフがいるあの場所では病院を建てようとしている。元の建物が老朽化していてこのままでは多くの患者さんの命を守れないから新しく頑丈なものにしないといけないんだ。それはわかるよね?」
「押忍。それはわかってるんスけど……」
 ヨウコは噛んで含めるような口調で語りかけるが、ハルキは未だに答えを見つけられないようだ。
 結局昼食後に再び現場に行きヨウコ搭乗のキングジョーがイフを撃つという方向で話がまとまった。


12時00分 

ハルキはウルトラマンゼットによってインナースペースに呼び出されていた。
「すみませんゼットさん。俺また心配かけちゃったっスね」
「お気になさらずともようございますよハルキ。俺も一緒に考えていこうって言ったんだから泥舟に乗った気持ちになってくれよ」
 大船に乗った気持ちって言いたいんだなと察しつつ、ハルキは共に悩んでくれる存在があることで少し安らぎを感じていた。
「イフ……トゲトゲ星人……やっべえ〜〜どんな奴なのか全然わからん……ゼロ師匠にバレたらまた座学はちゃんとやれって怒られる……」
 一方ゼットは聞いたこともない存在に不安を感じていた。
 

12時37分

 ——そうだ音楽!とある地球はイフに音楽を聴かせて滅亡の危機を脱したという——
 閃いたヘビクラはすぐに整備コンテナに向かい、整備班班長イナバコジロー(通称バコさん)に話を持ちかけた。
「というわけで音楽を聴かせて現場から移動させるのはどうかと」
「なるほどわかったぜヘビちゃん。俺たちで音楽を鳴らせというわけだな?おいお前らー集合ー!急いで準備しろ!」
 整備班がそれぞれの装備を持って集まっていく。バチ、小太鼓、大太鼓、櫓——
「待ってくださいこれは祭囃子では」
「おうよ!これが俺たちの魂の音だ!」
「バコさんやっぱりこの作戦はナシの方向で」
 イフにクラシックではなく祭囃子など聴かせたらどんなことになるか想像もつかない。ウルトラマンタロウが守っていた地球の怪獣なら何となく楽しくなって満足してくれたかもしれないがこの地球はそうではないのだ。
「えっ班長却下されたんですか?」
「ああ、今回は残念だったがまた何かの機会にやれるといいな」
 整備班は落胆しているがこの祭囃子が後に役に立つ時が来るのはまた別の話。
 何も対策を思いつかず焦るヘビクラはパソコンで今日の行事予定を見ていた。
 

13時48分

 再び松川市。ヨウコ搭乗のキングジョー現着。ハルキは地上から援護に回ることになった。イフは朝の時と変わらず囲いの中でただそこに「在る」。リングのロープのように巻かれている電線を切ろうとした時に予想通りファイブキングが現れた。
「アレが来るまでの時間稼ぎだ」
 ヘビクラは呟き、ファイブキングをキングジョーに突進させた。ヨウコも怯むことなくキングジョーをファイブキングに突撃させる。さながら場外乱闘とでも言うべき状況になっていた。
 2体が技を撃ち合い続ける中何かが走ってくる気配を感じたヘビクラがその方向を見ると、それは背中に怪研と書かれた緑のツナギを着た青年だった。怪獣研究センター所属のカブラギシンヤ——いや、
セレブロ……!」
 カブラギの体に取り憑いているセレブロは懐から怪獣メダルを取り出し、囲いの中のイフに向かって投げ……
「余計なことしてんじゃねえよ!」
 ファイブキングがすかさずメダルを弾く。すぐにセレブロは別のメダルを投げる。イフにメダルを埋め込みキメラ怪獣を作り出すつもりのようだ。もちろんそんなことをされては面倒な事態になる。ヘビクラは目の前のキングジョーの攻撃をやり過ごしつつ次々と投げられるメダルを弾き続ける。
「めんどくせえ奴らだな!」
 そろそろ疲労困憊になってきたヘビクラは連続で四方八方に破壊光線を放出した。
「わあーっ!」
 光線が命中したキングジョーが倒れてヨウコが悲鳴を上げる。セレブロも遠くへ吹っ飛ばされる。囲っていた電線もかなりの数が焼き切れたが中にいるイフには影響がなく依然としてその場に「在る」。ハルキはすかさずゼットライザーを構えた。
「真っ赤に燃える勇気の力!」
「マン兄さん!」
「エース兄さん!」
「タロウ兄さん!」
 スリットにウルトラメダルが入り、ゼットが叫ぶ。
「ご唱和ください我の名を!ウルトラマンゼェーット!」
ウルトラマンゼェーット!」
 ハルキも叫びゼットライザーのトリガーを押す。
ウルトラマンゼット!ベータスマッシュ!」
 マスクを被った赤いあいつ、ベータスマッシュの登場だ。そのままファイブキングにまずはドロップキック。続いて尻尾を掴み一本背負い。畳みかけるようにバックドロップ。さらには組み伏せて押さえ込みカウントを取り始めた。ファイブキングはフラフラで立ち上がれないでいる。
「ゼット様ありがとうございます!今のうちに!」
 キングジョーが立ち上がり、囲いが崩れたイフに向かって砲身を向けた。
「ペダニウム粒子砲発射!」
「おいやめろ!待てー!」
「これでいいのかヘビちゃーん!」
 ヘビクラの叫びと同時にバコさんの声が辺りに響き、一同の動きが止まった。そこに手を振りながら走ってくる巨大な姿は退役して博物館に展示されているはずの特空機1号セブンガー。手にはイフと同じくらいの大きさのセブンガー型の気球を持っている。
「や、やっと来たか……」
 傷だらけで立つこともままならないヘビクラが安堵の声を上げた。
 今日は博物館で子供たちを集めて科学実験のイベントを行っていることをカレンダーで知ったヘビクラがバコさんに依頼し、気球を持ってきてもらったのだ。
 イフにギリギリまで近づいたところでセブンガーが手を離すと風船はふわふわと飛んでイフにぽいんっと当たった。するとイフはセブンガーの形に変わり、ふわっと地面から浮き上がった。
「ウインダムが持ち上げようとした時に仮面の宇宙人様がイフは押した力と同じ力で押し返してるんだって言ってたでしょ?もしかしたらイフは受けた力を反射するのかもしれない」
 基地にいるユカの話を聞きながらハルキは閃いた。

「変幻自在、神秘の光!」

「ティガ先輩!」

「ダイナ先輩!」

「ガイア先輩!」

「ご唱和ください我の名を!ウルトラマンゼェェーット!」

ウルトラマンゼェーット!」

ウルトラマンゼット!ガンマフューチャー!」

 神秘のトリックスター、ガンマフューチャーの登場だ。指をパチンと鳴らしてウルトラマンティガウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイアのエネルギー体と共にイフの下へ回り込み、両手で風を送り込む。イフもゼットに向かって風を吹かせながらより高く浮かんでいく。
「これで何とかなりそうだな」
 ヘビクラが安堵した表情でファイブキングの変身を解除しようとしたその時、元の場所に戻って来たセレブロが再び怪獣メダルを投げつけようとしていた。
「いい加減にしろよおまええええええ!」
 ヘビクラは大急ぎで変身解除した後ジャグラー魔人態に変わり、蛇心剣で次々とメダルを打ち返していく。
「キャハハハキャッチボール、キエテカレカレータ」
「キャッチボールじゃねえよ!あと楽しむな!」
 一方ゼットはイフをふわふわと飛ばし続け、ついに大気圏を脱していた。
「ごめんな、この地球におまえが生きていける場所はないんだ。この宇宙のどこかで安心して暮らせる場所を見つけて欲しい」
 ハルキの言葉が聞こえなかったのか、イフはそのまま宇宙空間へ流れていった。
 地上では事態の解決を確認したヨウコとバコさんが笑っていた。セレブロは不服そうに去っていく。そしてヘビクラは——
「あ〜〜〜疲れた……」
 

16時39分

 夕陽が差し込む仮眠室で大の字になっているヘビクラに近づいてくる影があった。昔よく聴いたメロディ——
「ガイ……!?」
 あらゆる意味で今一番会いたくない顔だった。
「何しに来たお前。ミッションがあるんじゃねえのか」
「そうだな。今デビルスプリンターの回収をしているからあまり暇じゃないんだがちょっと懐かしい顔を見かけたもんでな」
「俺としちゃ懐かしさなんぞ感じたくねえんだがな」
「まあそう言うなよ。お前さん、この地球の防衛隊の隊長やってるんだな。お疲れさんです」
「労りの声なんかかけるな。かえって疲れる」
 ——どういうつもりだガイ。まさか俺の計画を嗅ぎつけて阻止しに来たんじゃねえだろうな——
 蛇心剣の柄に手をかけたのと同時にガイは言葉を返した。
「何を企んでるのかと思っていたけどなかなかよくやってるじゃないか。そんなに人間が好きになったのか、ジャグラー
「はあ!?何言ってんだお前——」
 想定外の言葉に困惑したヘビクラが立ち上がるとガイの姿はなく、ただ夕陽の紅が辺りを染めているばかりだった。疲労の余り眠ってしまっていたようだ。
「夕陽の馬鹿野郎ー!何でそんなに紅いんだよー!」
 自分でもよくわからない叫びをしたヘビクラは座り込んだ。
「第三番惑星地球——滅びるには惜しい者たちが住む星だ——俺の計画のためにな」
 そして独りで嗤うのであった。