浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

オーバー・フェンス(11月16日鳥取県MOVIX日吉津にて観賞)

eiga.com

↑ご当地函館及び全国主要都市における公開日9月17日の舞台挨拶の記事。「あいつ…どこにいるんだろうなあ…」とボケようとしたらまさかのキューバで笑った笑ったwwただこういうこともあり、自分が映画を観られる時期にまでイベントが持続していたのはありがたいことでございました。地方民としては公開が遅くなる映画ってだいたいイベントはもう終わっちゃってるし映画館側の告知も地味なものでいつもさみしくなるし「これ地元民に存在を気づいてもらえないのでは…」と心配になるんですよね。映画はそんな地域の人が観ると心にしみる部分があるように思いました。

「オーバー・フェンス」オリジナル・サウンドトラック

「オーバー・フェンス」オリジナル・サウンドトラック

 

 

オダギリジョーさんのインタビュー記事が載るということで買った札幌の情報誌がこちら。なるほどLazudaみたいな雑誌ね⁉と思ったら結構紙質が良くて怯んだ思い出。北海道ってもともと観光地も特産品も有名だし、こういう雑誌に出てくるような華やかなイメージがありました。なおこの映画にはそういう北海道はいっさい登場しません。出てくるのはそんな華やかな場所に行く途中にあるような生活の場としての函館。さびれたアパート。刑務所と間違えそうな職業訓練校。柱の塗装が剥げて錆びついた遊園地。ああ…わかる…わかるよ…松江城が国宝指定になったうちの地方も他県から見える姿と住んでて見える姿が全然違うみたいだからな…と変な共感をしてしまった(ノ∀`)みんなも全国放送の旅番組で地元が紹介された時にあまりにキレイに撮られていて「わあーこんな素敵なところ住んでみたーい(棒)」って思ったことあるだろう…?

前置きが相当長くなったが妻子と別れ職も失い夢も希望もない白岩の心象風景を映し出すかのように彼の行く先々の風景はあまり輝きもなく錆びついて見える。

f:id:asanem800:20161117085927j:image

聡と心が通じ合った時に降ってくる羽はくたびれた心に射し込んだ光のようで。

overfence-movie.jp

その後公式サイトのトップにも使われているこの美しい画になり、うっとりしたと思った私はとんだあまちゃんでしたよ…。

f:id:asanem800:20161117085945j:image

※いろんなインタビュー記事で触れられている、オダギリさんが自他ともに得意と認め蒼井優さんが本気で怖かったと語る白岩の「そんな目」の再現に試みるも画力の限界である。

なぜ聡があんなに壊れているのかは劇中ではっきり語られていないから想像でしかないんだけど、この名前から察するに彼女の親は本当は男の子が欲しかったからこう名付けたのではないか、しかしそれは彼女にしたら生まれながらにして失敗作と言われてるようなものなのでせめて親を裏切らないように生きようとしても上手くいかないということが続きすぎてこうなったのではないかと思った。実家で暮らしているのは親の目の行き届かない所に行かれると何するかわからなくて怖いから、彼女自身の寝食は風呂場もない離れなのは親が必要以上には関わりたくないからって考えると筋が通る。これまで多くの人間に「そんな目」で見られてきたのではないかと。檻の向こうに閉じ込められた鳥。

公式側はずっとこの映画をラブストーリーと言い張ってきたけど予想通りそのフレーズから連想されるキラキラ感はあまりなくて、上手く生きられない人しか登場しない。壊す男、壊れた女、調子良さそうに振る舞う者、闇を抱え込む者、背中におさかなの絵(マイルドな表現)がある者。それでもこの映画が鬱展開なのかというとそうではなく見守る人も支える人も存在していて、人生は苦しいことも多いんだけど希望の光が降り注ぐこともあると描く人間愛の映画と思った。曇り空の向こうには綺麗な青空が広がっているんだ。(←上手いこと言ってやったみたいな顔でここの部分書いてる)そして勝間田さんはみんなのアイドルです(*´ω`*)

きっとこれからも聡は事あるごとに平静とハイとローを繰り返すだろうし、白岩も彼女と結婚まではいかないだろうなあとも思う。再会した元妻が「えっ本当にこの人育児ノイローゼで子供を殺そうとしたんですか」ってほどに(おそらくこの映画の登場人物で唯一)「ちゃんと」してて、「ああ白岩これその場その場で適当に笑ってやり過ごすだけで嫁の話全然聞いてなかったんだな…朝ドラなら大炎上してるぜ…」と理解でき、そんな2人が家庭を築く光景がまず想像できないけど、それでも絶望なだけでなくてわずかでもいいことがあれば、人間案外それで生きていけるものだからこの2人もそうして生きていくんだと思う。歳食ってキラキラしたものが眩しすぎて辛い身には結構こういうタイプの物語がしみる。良い映画でございました。我が地域では1日2回で2週間限定上映という厳しい日程だけど、なるべく多くの人に観てもらいたいなあ。