浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

PLAN75


www.youtube.com

75歳以上の者は自分の生死に関する選択を行使できる制度PLAN75ができた近未来。身寄りも職もない78歳のミチはこの制度の利用を思い立つ。

とかく自己責任論が主張される現代では高齢者が若者を食い物にしてると騒がれる。ではその主張が通ったら?“国のお墨付き”となったら?この映画はそんな“起こりうる可能性が高い未来の話”です。

「他人に迷惑をかけてはいけない」という価値観は私たちの中にあまりにも強力に染みついてしまっている。だから老人たちは家族に迷惑をかけては申し訳ないと死を選んでいく。では全ての若者たちが老人を憎んでいるのかというとそうでもなく、良心の呵責に苦しんでいる。それでも「決まったことだから」とこの制度に異議を申し立てることはしない。*1 何気にエグいなと思ったことは、遺体の遺品処理をしているのが幼い子供を抱えた外国人女性というところ。弱い立場の人間が苦しい立場に立たされているのは変わらない。相談に来る老人に親身にわかりやすく接するヒロムは公園のベンチでホームレスが寝られないような対策を笑いながらしてる「正しい役場の職員」でもあるし、でも死に向かう叔父の姿に動揺する「普通の人間」でもあるという簡単な言葉では割り切れない感じ。

今の時代を鮮烈に切り取ったものであり今観るべき作品ではあるんだけど、音楽も含めて全体的な雰囲気がとても重苦しく、人に勧めていいのかは迷うところです。とても良い作品だけど二度と観たくない、そんな複雑な思いにさせられる映画。でもあちこちに忖度して毒にも薬にもならないよりかはその方向性は好きやで。

もしこの制度が本当にできたら75歳になった時皆さんは死を選びますか?その時にならないと何とも言えないけど、私は選んでしまいそうな気がしています。でも実際には国は10万円もくれないかもしれないなあ…みんな選挙行こうね…どうなるにしてもせめて自分の選択の結果でありたいので…。

*1:少数ながら反対派は存在しているらしい。