早えもんだぜ、あの吉宗公の世から20年…赤面疱瘡撲滅は彼女の代では達成できず、その願いは次世代へ引き継がれることになった。田沼意次が招いた平賀源内と青沼によって大奥の中で蘭学の会が開かれることになり、やがて人痘接種へとたどり着いていく。しかし快く思わない者たちによる陰謀に巻き込まれていく。ちょっと面白いのは吉宗とは血が繋がっていない意次が彼女の意志を正確に受け継ぎ大胆な改革を厭わなくて孫の松平定信は旧来のやり方を変えられるのが気に食わないというところですね。「吉宗公が草葉の陰で泣いておるわ!」って言われましてもあの吉宗公はきっとこの勉強会に興味持つし加わるし何なら混血で見たことのない見た目の青沼に手を出しそうよ?そんなこんなで時に苦労はありながらも赤面撲滅のルートを切り開いていく光の物語…ではなかったのか?????
「爽やか医療学園ドラマを観ていると思っていたらドロドロ政争ドラマになっていた」何を言っているのかわからねーと思うが私も何が起こったのかわからなかった。それは未知の怪しげなものに見えても仕方なかったのかもしれない、しかし人のため未来のために奔走してきた者たちが足を引っ張られ突き落とされる、あまりに理不尽。しかも人痘接種って現代でいうとワクチン接種に近いものだから視聴者はその有用性を理解しているわけで、それを阻む行為はとんでもなく愚かな横暴に見える。
だが裏では糸を引いている者は愚かとかそういうことではなかった。あれはもう吐き気を催す邪悪だ。
一橋治済、吉宗公の孫。良き世を作りたいみたいな志を持たず、権力を得るために邪魔者を排除し息子家斉を将軍に据える。そして権力を得た後は退屈凌ぎのために大奥の人間関係を壊し家斉の子供たちを次々と手にかける。吉宗公は異国に攻め込まれたら力の弱い女が治める国では危ないと危惧して赤面撲滅を目指していたがこのままでは赤面も異国も関係なく彼女の血を引く者の気まぐれで国が滅びかねない。
それでも家斉公は母の目をかわしながら人痘接種への道を繋いでゆき、それは熊痘接種となって赤面を跳ね除けることに成功する。異国に攻め込まれる前に男の数が増えて国防も安心、なのに「本当にこれでよかったのか…?」という思いがとても強いのはどうしてだろう。これまでの女性優位だったこの世界では能力ある男性は要職に就けず種付けに回されるばかりだった→それはよくない→男性が増えたので女性が家督を継げなくなり能力ある女性が要職に就けなくなった→ちがうそうじゃない。→思うんだけど…一方の性別だけに役割を限定させることとか、もっと言うなら就ける役職が血筋で決まることがそもそも間違いなんじゃね…?でも徳川幕府がある間は誰もそこに気づけないよなあ…?
家斉公は気弱だが優しい人だ。母治済にどれだけ詰られても人痘への道を諦めなかった。思いを同じくする者と助け合い、彼らを守りながらその願いを果たした。でも、隣にいる妻たちとは思いを同じくはできなかった。御台と側室お志賀が密かに手を組み治済毒殺を謀ったのは我が子を殺された復讐のため。それは悲しき母の愛だ。でも苦しむ治済を助けてやってくれと頼み込むのは「ああ…」となるし「御台とお志賀が怒りと悲しみを滲ませた表情で言ってたのちゃんと聞いてた???💢」ともなる。殺された子供たちは家斉公の子供でもあるのに。治済は家斉公を操り人形としか思っていないのに。御台が全てを諦めた顔で「あなたはそういう人ですものね」と言うのすごく悲しいのですよ。
赤面撲滅というか防ぐ方法を見つける話だったのにとんでもない化け物が割り込んできてめちゃくちゃ地獄だったけどだんだん“本来の”江戸時代に戻っていくんだなーと思ったら最後に新鮮な地獄が放り込まれるの何なんですか?追い地獄か???父家慶から性的虐待を受ける祥子の構図、これもまた親に逆らえない子供なのだなあ。