浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

僕の手を売ります 丸4「土木屋の妻」

【ここまでのあらすじ】借金280万をチャラにしてあげるとの言葉に釣られて横須賀のスナックで働く女性に示談交渉に向かったらいつのまにか彼女の行方不明になっている父親を探すことになり、大桑北郎は日本全国を回っている。【どうしてこうなった】

 

今回大桑がたどり着いたのは石巻市。そこで怪しげなきのこ商売をしていたらしい佐伯のことはさておき見えてくるのは土木会社社長夫婦の複雑な関係。津波に流されて今も見つからないカセットテープと仲間。その仲間を今も求め続ける老いた母。約10年止まっていたバンド活動の再開。それらの姿からわかってくるのはあの震災が残した深い傷。だけど遠い未来の人は見つからない人も今生きている人も骨として見つけるかもしれない。

私は西日本の人間なのであの震災についてはどうしても当事者の感覚を持てないところがあり、大桑の言葉も夫婦に何かをもたらすのかどうかは掴みきれないところはあります。わかるのはこの人たちは癒えない傷を抱えながらこれからも日々を生きていくのだろうということだけ。大桑は他人の人生に通りすがり、彼らに大きな影響を与えたりはしないがちょっとだけ気持ちを軽くして去っていく。まあ本人はいつもわたわたしているのだけど。