浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

ナショナルキッド 一部 インカ族の来襲

東映特撮YouTubeナショナルキッド配信中です。何と62年前!もちろん白黒!当然ながら初視聴です。*1

何だかわからないがすごそうな気がしてくるオープニングのナレーション、「ナショナルキッド ?」というあくまで彼は正体不明ですよと言い張る姿勢、そしてスポンサーは松下電器(現Panasonic)一社。この時代に生まれてない者からすると一周回って新鮮な感じ。あと美術担当があの成田亨氏ですよ。円盤の造形がどのくらい凄いかというとギャバンの時に流用されたほどとのこと。東映物持ちいいなー…。

そんなナショナルキッドが戦う敵は宇宙からの侵略者インカ金星人。原子力の扱いに慎重になれと警告したが地球人が従わなかったため攻撃を敢行…向こうの言い分にも一理あるのでは…?とは思うんだけど何しろスポンサーは電器メーカー。戦後15年という時代、戦争に用いられた危険なエネルギーである原子力を平和と発展のために使いたいという願いがあったのかなと想像する。

観ていると結構不思議に見えるところは多くて、まず「昔の特撮ヒーロー番組」って主に70年代で培われたイメージがとても強いと思うのですね。

  • 1話完結
  • 作戦を実行する怪人がたくさんの戦闘員を連れている
  • 基本的に「この地球を征服してやるのだぁ〜!ケケケー!」みたいな下卑た言葉使い
  • ヒーローは力強いセリフを言いながら敵の作戦を阻止する
  • 最後は必殺技で怪人大爆発

こういうルーティンで話が回っていく印象。それがこの作品、そんな様式美が確立される前の時代なのでだいぶ違っております。まず連続ストーリー。その週起こった事件が次回に持ち越しになることも多かったり。あと「怪人」のような概念がまだ存在してなくて女隊長アウラの指揮の下で黒ずくめの部下が策略を巡らせている。そして言葉使いが上品。でも捕らえた科学者に協力させるため見せしめとして助手を溶解死させるなどやり口は残忍なところが怖さを感じさせる。一方で分が悪い状況と判断したら撤退するほど冷静。そしてナショナルキッドの方も話しぶりが上品。一人称が「わたくし」ですよ。そして敵が爆死しません。溶けて死ぬことはあった。

たぶん時代劇のフォーマットそのままで撮ってるのかなと思う。みんな刀を持ってないからチャンバラにはならないけど概念としてのチャンバラ。でも後年の暴れん坊将軍的なド派手なのともまた違う。それどころかアクションをしない回まである。それから主人公旗竜作がヒロインのチャコと共にみなしごを育てながら警察の捜査に協力するシチュエーションってのも時代劇でそういうの“ありそう”やん?それとびっくりしたのは敵と戦うことなく病気の少年を励ます話で約30分費やした回があった。ヒーロー番組として成立させるために必要なこととは何なのか、考えさせられる思い。

あと私は特撮の技術についてあまり詳しくないけど、昔の作品ってどうしても戦闘機を吊っているピアノ線とか見えてしまうけどそこは見なかったことにしながら視聴するものじゃないですか、白黒だからなのか画質のせいなのかはわからないけどナショナルキッドを13話まで観てた範囲ではそういう“謎の線”は見えませんでした。その上で大きな宇宙船から小さな円盤がスムーズに発進したり戦闘機が宙返りしたりする。1960年にどうやって撮ったのあれ???

カムカムで60年代特撮映画が出てきた時、「この時代としてはアクションのキレが良すぎるのでは…?」という疑問を持ってたのだけど私も60年代特撮はウルトラ昭和1期しかわからないので自分の違和感をうまく消化できてなかったのだけど、実際に当時の特撮を観ると解像度が上がってきますね。

おそらく時代が進むにつれて制作の都合も重なって東映特撮特有の様式美ができていったのだと思うけど、そこに行き着くまでどんなことがあったのかを知る機会はかなり貴重であります。そして原版劣化により不完全な状態での収録となる回もあったりして、まず観られることが貴重なのだという思いで観ていくつもりです。

金と青のゾーフィーカラーなのか。

ところで作品内容とは無関係なところですごく残念なことがあって、東映特撮YouTubeがずっと不思議コメディタグと石ノ森章太郎タグをつけてるところです。もう1ヶ月過ぎましたよ。これは月曜夜の配信枠でずっと不思議コメディをやってたからだと思うんだが…いい加減すぎやしないか…。どうにもここ最近いろいろあって東映特撮に対してうっすらとした不信感はありますね。売れてる売れてないに関係なくどの作品も歴史を繋いだ大切なピースという考え方はないんだろうか。*2

*1:すまん…当方TTFCには入っとらんのじゃ…

*2:その後15話辺りでこの2つのタグは消えました