浅羽ネムの長いひとりごと

誰かの言葉に乗っかるのではなく自分の言葉を紡ぎたい。

658km、陽子の旅


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陽子42歳独身、コミュニケーションが不得意で要領も良くなくて、東京で引きこもって生きている。長らく音信不通だった父の死を知らされて親戚の案内で故郷青森に向かうが途中ではぐれてしまった。所持金2432円でスマホも壊れてる陽子はヒッチハイクで出棺に向かおうと決意したが───。

 

 

Q:何でそんな変な方向に思い切りがいいのよ!?(画像略)

A:その通りでございます。陽子がもう少し頭の回る人間であったならこの所持金でもどうにかできた可能性は高いです。とはいえそのうち2000円ってあの伝説の二千円札なんだよなー…一応使えるけど通せない機械が多すぎるとかで使用は相当制限されるはず…。

そういうのは置いといてこの映画の主軸はヒロイン陽子のとてつもない不器用さだ。困っているのに他人にろくに声もかけられない、話を振られても上手に返すこともできない、あげく無茶な二者択一を迫られて絶対にやってはいけない「合意」の上で行きずりの男と肉体関係を持ってしまう。これが若い女性だったら哀れにも思われたかもしれないが中年女性なのでただただ愚かに見えてしまう。

ただ私はですね、陽子のこのあり方を全然良いとは思わないのだけど、フィクションにおける中年女性って母親かバリキャリか、要するに「賢く強い女」しか存在を許されないよなというのを時に苦々しく思うことはあって、愚かかもしれないけどバタバタしながらも前へ進もうとはしてる姿が描かれるのは彼女とそんなに変わりない生き様な私としては多少は心安らかになるところはあります。何かあ、男性キャラはイケメンも不細工も老人も賢者も愚者もいっぱいバリエーションがあるじゃない、女性キャラはまずグレードが高くないと存在すらできねえですからね。…まあ陽子のあのキャラって菊地凛子さんの演技力があってこそ主人公として持たせられるのだろうというのは思います。

夜の闇が広がるごとに悲惨な目に遭う陽子は朝陽と共に人の優しさに触れていき、やがて不器用なままでもちゃんと人に話しかけようとするまでにはなる。最初のうちに彼女にだけ見えていたイマジナリー父親は若い(陽子が最後に見た42歳の)姿だけどやがて年老いた(陽子が想像する“現在”の)姿になっていく。ところで陽子の口ぶりだと実際の父親は怒りっぽいところがあった様子なんだけどイマジナリー父親は言葉もなくずっと娘を見守るような行動を取っていて、あれは陽子の「こうあってほしかった」父親の姿なんだろうか。

自分一人では東京から青森まで行けなかった、ここまで連れて行ってくれた人たちみんなに感謝してる、その気持ちは大切というのはわかるんだけど…無理な「合意」で陽子を抱いた男もその一人ってことになるけどそれはいいんだろうかというモヤっとはあります。観てて気分のいいシーンではないので。

父親が「本当に」陽子を待ってくれていたのかどうか、それは誰にもわからない。でも最後のシーンは一つの救い。

ところで上ではBlu-rayのリンクを貼っていますが、

video.unext.jp

U-NEXTは月額が結構なお値段なのでなかなか気軽に手を出しにくいけどプリペイドカードを使うことで加入せずに観るやり方があり、ツブコンやウルトラヒーローズEXPOの公演のために買ったポイントの余りでレンタル視聴ができました。今後もこの方法は有効に使っていきたい。