思えばエールは原始時代から始まるようなドラマだったわけで、コロナ禍がなかったとしても最終的な着地はこうだったと思うんですよ。
天才作曲家の夫と声楽家への努力はしたが才能には恵まれなかった妻の凸凹な人生のドラマとしては途中笑うところも深刻になるところもあり面白かったけど一方で「作曲家古関裕而のドラマ」としてはちょっと異色作の方向に走りすぎてやしなかったかという思いもあって、百点満点の評価は出せないんですよ。コロナ禍による様々な影響を差し引いたとしてもです。
それでも主人公を妻ではなく夫にしたことで戦争について巻き込まれた被害者ではなく多くの市民を戦争に駆り立てた加害者の視点で描いたのもそこからエール=応援の意味を問い直す流れも良かったと思うわけです。最後の方のオリンピックマーチ作曲で「復興を駆り立てる曲にはしたくない」と言ってたのは戦時中の行いの反省があると思うし。でもいかんせん尺が削られたせいかすごくバタバタと高速で終わってしまい。ただオリンピックのところは尺があっても充分な撮影はできなかったかもなあという思いもあり。
オリンピック開催までの模様を知りたいならいだてんを観ようぜ!というかいだてん放送中にこの事態になってたらどんな恐ろしいことになってたかと思うと震えるわ!(素人が思いつくだけでもまずストックホルムロケ不可能、選手や政治家などの外国人俳優を揃えられない可能性、日本人俳優だけでどうにかするとしても運動する撮影ってどんだけ撮れるんだろう)
まあそれはともかく、でもこの異常事態において異色作だからこそ最後までどうにか走りきれたのではないかとも思うんです。「きっちりとした」作風のドラマがこういう事態に見舞われたら立て直せなかったかもしれない。エールは時代ものだけどある意味で令和2年のこの時代を映し出すドラマとなったのかなと思います。
朝ドラってきっと日常の象徴として最たるものなのだろうと考えていて、しっかり観る人、ながら見する人、
あとBSで再放送中の澪つくしで今日は最後に恋のあらすじが流れるだろうかとwktkしてる人とか。(説明しますと尺調整のために最後に突然この歌が差し込まれる日が時々あって、どんなシリアスな引きで終わろうと尺が余れば空気も読まずに入ってくるのが妙にツボにハマるのですよ)
視聴の仕方はそれぞれだけど毎朝NHKをつければ放送されていればまだ世界は大丈夫と思える。どうしても平穏ではいられない今、そんな存在はとても大事なのだと考えるようになりました。
とはいえ私自身はまた生活スケジュールが変わっていきますし、またいつか気が向いた時に朝ドラに立ち入ることになるのでしょう。その時まで世界が何とか続いていけますように。